正統派同人メタル最右翼サークルの渾身の一枚。
Album: 楽園の残響 (上)
Band: Sparespine
Year: 2013
Country: Japan
Genre: メロディック・パワー・メタル
Track List 1. 波紋 2. 光の演算 3. 惑星開拓期 4. 歌声は銀河を超えて 5. チタンの骨 6. ブレインスマッシャー 7. 深夜の高速軌道 8. 心臓の棘 9. 空を突き抜けて 10. 跳躍
2015年春のM3にて頒布された「楽園の残響(下)」の前編となる作品です。(下)は物語の佳境ということもあり、プログレッシブな構築美が強調されたり、一方で正統派らしく、クールなギターリフが印象的な大作志向の作品でした。今回レビューする(上)も方向性は同じですが、比較的ストレートな楽曲が多く、キャッチーなメロディーも耳に残る、とっつきやすい作品という印象を受けました。
同人きってのマルチプレーヤー、岩下タミさんによる生演奏もすばらしいですが、その独自のメロディーセンスや世界観が、他のサークルにはない強烈なオリジナリティを放っています。また、シンセ系の音使いが絶妙で、モダンさは皆無であるのに関わらずスペーシーな雰囲気があります。どんな音楽を聴いたらこんな音楽が作れるんだろう。
トロンのコーラスから始まるインスト曲#1からその世界観が抜群にキマってます。続く#2は悶絶必至の劇的なイントロで幕を開けます。このイントロ、これまで聴いてきたメタルの5本指に入るんじゃないか、というくらいの扇情力があります。ボーカルは女性で、Aメロ、Bメロとあっさり目の歌メロになっていますが、大サビで一気にクサメロが炸裂します。その後のインストパートは2分半程ありますが、劇的なフレーズの応酬で、そこから最後のサビへのつなぎも最高ですね。
#3は激ウマ男性ボーカル、Jo’Lさんによる曲。ジャパメタチックなアツい声質で、ハイトーンの伸びやかさはプロ顔負けです。正直、メタラー的には、この方が全曲メインボーカルでいいんじゃないか・・・と思うのですが、同人の世界というのは男性ボーカルに厳しいんですよね・・・
#4は目まぐるしく転調する、コンポーザーとしての実力を感じる1曲。これだけ転調を繰り返して曲が破綻しないどころか、ドラマティックさを演出できるのは本当にすごい。それでいて、コンパクトにおさめるバランス感覚は本当に脱帽します。
モダンでデジタル感あふれる#5は、キャッチーなサビとのギャップが面白い曲ですし、#6も雰囲気は異なりますが、キャッチーなサビが印象的な1曲。
#7は再びの男性ボーカルによる激アツ曲。アルバム中最も正統派な雰囲気で、ボーカルの声質と相まって、ジャパメタ感もあります。サビからのギターソロの流れが信じられないくらいにクサく、メタラーにとってはたまらない曲です。
カッティングギターが印象的なバラード#8を挟み、再び正統派メタルの#9。ボーカルが女性の分、キャッチーさが増しています。フックのあるメロディがとても印象的です。ツインギターのパートもキマってる。もうちょっとタイトさがあれば、同人メタルに名を残す名曲になっていたのに・・・というレベルで惜しい。
アルバムの最後を飾る#10は、ダンサンブルでミステリアスな曲。(下)へと繋がる曲、という位置づけなのでしょうか。あまりラストの曲という感じではなく、フワっとアルバムが終わります。
楽曲単位でみれば悶絶必至の曲が複数ありますし、 全体を通してもコンパクトにおさまっているので、かなり聴きやすいアルバムです。ただ、なんとなく、アルバム全体を通すと、(下)の方が聴き続けるんだろうなぁ・・・という感じはあります。というのも、2年前の音源ということで、若干音質的に劣っていたり、男性ボーカル曲が少ないというところで、メタル的なアグレッシブさが若干薄いように感じられました。
音楽性的な意味で、Sparespineは、同人リスナーよりもかつてのB級メロスパーに好まれるサークルだと思います。メロスピ的な飛翔感がそこまである訳ではないのですが、強烈な世界観とメロディーの扇情力は当時のイタリアンメタルに通じるものがあります。
それぞれのアルバムを独立して楽しむことが出来る作品ではありますが、上下2枚通して聴くことでさらなる楽しみ方ができる作品だと思います。上を買い逃した方、下を買うか悩んでいる方、値段も安いので是非ゲットしてください!
関連ページ 楽園の残響 (下) / Sparespine
アブラハム的オススメ曲 #2 光の演算 #7 深夜の高速軌道
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